2018年6月18日月曜日

赤い釉薬で、ゾーンに没入。

釉薬の調合や焼成方法などを延々と悩みながらも、ひたすら制作を続けていると、ふと次の展開が理由もなくズルズルっと思い浮かぶ時がある。直感的に材料を手に取り、釉薬をのせる刷毛の動きが心地よくスムーズで、大きな熱を持った静けさに没入するような。決して多くはない貴重な時空間での制作。








title "the zone" ceramics on wood panel.
1300mm x 460mm x 50mm 2018 (個人蔵)

2018年6月16日土曜日

赤い釉薬の構成。

new red glaze.
新しく調合した赤い釉薬について。



日本の伝統的な陶磁器にこれまで存在した赤は主に鉄(弁柄)による赤絵や、銅の還元色の辰砂など。近代の陶試紅に代表される赤い着色顔料も含めてそのほとんどが不透明な色調だった。

陶磁器の歴史は長いので、透明感のある赤い発色は無理なものと思い込んでいた。しかしインターネットでガラス系、七宝系の赤い発色を調べてその発色の仕組みを勉強すると陶芸に応用することも不可能ではないことが見えてきた。赤や黄色を発色する金属の人体また環境への影響も、ガラス化された原料を使用することで影響はガラス内の変化に留まるため外部環境への流出は基本的には無い。(強酸性液体を長時間保持する容器内側への使用は避けたほうが良い。)他の陶芸原料と調合し、陶板との収縮比を合わせ、焼成温度を最適な発色に調整するテストを重ねて完成した。



原発事故を経験する前から陶芸で扱う原料物質の素性や毒性、扱う責任には強い関心を抱いている。

陶芸は環境と調和した自然な生業とのイメージもあるが、それは大きな誤解である。ウランを始めて工業利用したのも陶芸の着色顔料(黄色)が最初だ。



人間として、宇宙を構成する元素への飽くなき興味、探究心を持ち、自身の仕事の範囲内で無理なく安全に扱える範囲を定めて、個々の物質の内に眠る可能性をその固有の美しさとして最大限に表現していきたいと思って制作しています。

吉田晴弥

2018年6月15日金曜日

2018年 吉田晴弥 現代陶芸 展覧会

2018年 5月28日(月)〜6月2日(土)11:00-19:00 (最終日17:00)
galleria grafica bis 東京都中央区銀座6-13-4

- elemental composition2018 -

アタマを柔らかくして、あたらしい表現になりました。
今まで出来ないと思い込んでいた発色が可能になって、
使う燃料が半分以下で済むようになり、
時間と空間、物質とエネルギーが少し上手に使えるようになったように感じます。
まだまだ小さな前進なのですが、自分の中では大きな発見の連続です。


2018,05
吉田晴弥








新しく調合した釉薬 赤。日本の伝統的な赤い釉薬は鉄赤、辰砂、赤絵(弁柄)と、不透明な赤い発色が多数を占める。だから透明感のある赤い釉薬は出来ないと思い込んでいた、、、。
(個人蔵)


新しく調合した酸化銅の釉薬によるストライプ模様。妙な立体感が表現できた。
(個人蔵)


2017年 吉田晴弥 現代陶芸 展覧会

2017年 5月8日(月)〜5月13日(土)11:00-19:00(last day 17:00)
Galleria grafica bis (中央区銀座6−13−4)

吉田晴弥展 "elemental composition"
物質と現象の、根源的な美しさを見つめたい。
思考を超越する。
深淵に没入する。
2017,05



陶芸技法(特に釉薬による)抽象絵画表現です。

炭酸銅の発色。緑青(ロクショウ)独自の色彩を全面に構成。

火、ヒ、ヒトダマの陶の絵。(¥500,000-売約済)

部分。1300℃の本焼きを4回重ねた結果、予期せぬマチエールが現れてきた。

数字の0をモチーフとした作品。青はコバルト、白はチタンによる発色。
(¥200,000- 売約済)

部分。亜鉛結晶の結果が良好。

炭酸銅とチタンのコンポジション。熱により釉薬が熔けて動き、独自の色彩と線を生み出している。(¥180,000売約済)

2017年10月26日木曜日

ろくろは難しいということに気付く。

 陶芸の学び始めの頃はとにかくロクロに慣れる為に、ぐい飲みや湯呑み、碗などを数多く制作する。1日に湯呑みを100個以上ひける様になってくるとずいぶんと楽しくなって来て、車やバイクをドライブしている様な集中と心地良い疲れを感じる様になる。腰を基点に全身の力を程よく抜いて土に触れ、右足のペダル操作で回転を調整し、なるべく少ない手数で土を薄くシャープに整えて、次々と正確に器を仕上げてゆける様になると自信が出て来て自分はロクロが上手いような気持ちになる。

 そんな頃、火山巡りの旅の途中で立ち寄った萩焼の窯元で見事に自信を失う経験をした。萩焼のひとつのアイデンティティでもある「足蹴りろくろ」に触れる機会があったのだ。この経験には心底打ちのめされた。軽い気持ちで取り組んでみたものの、いっこうにカタチにならない。上のろくろの面と車軸でつながった下方には木製の重い回転盤があり、それを足裏で蹴ってまわしてろくろを回転させるのだが、これがとにかくエネルギーが要る。しかもせっかくまわしても手で土に無理な力を加えるとすぐに回転が止まってしまうのだ。あせって回そうとすればするほど身体は軸も腰の基点も失い、今度は上半身が全く定まらず土の成形どころではなくなってくる。猛ダッシュしながら静かに読書をしなければならないような無理難題具合にへとへとになり、午前中必死に取り組んで結局湯呑みが三個しかひけなかった。となりの轆轤場では地元の職人さんが涼しい顔をしてトーントーンとリズム良くろくろを蹴って、着実に制作を続けている。そして、「ああ、自分はロクロが上手いと思っていたのは幻想だったのだ、、、」と気付かされたのである。

 そう、電動ロクロで大量に器をひいたところで、それは原付バイクで遠出をするようなもので、自力で成し遂げたものとは言えないのは当然である。しかし身の回りにこのような根源的な道具が存在しないとき、人間は勘違いをするのだ。考えてみれば同じ様な構図はそこかしこにあり、電動ミシンや電動ノコギリ、電気洗濯機など。日常便利に使うだけなら見過ごせても、生業として関わる以上、やはりその本質的労力と技術を知っておきたいと思う。本質的な轆轤とは人間の叡智の力であって、電気の力よりもよほど熟練を要するものだったのだ。電気の力をはなれると、無理な力を土にかけないろくろ成形が目覚めてくる。素材に無理をかけない接し方、、。ものづくりの全ての歴史には人間の叡智が宿っている、、、。

 

2017年1月22日日曜日

2017 吉田晴弥展 -晴のうつわ-

2017 吉田晴弥展 -晴のうつわ- のお知らせです。
1月24日(火)〜1月29日(日)10:00 - 19:00 (最終日は17:00迄)
桃林堂 青山店 港区北青山3-6-12 表参道駅B4出口

土を足で練る冷たく柔らかな感触が全身の細胞を心地よく刺激する。
うつわの造形は、なるべく手数を少なくしてふんわりと放っておく。
釉薬の調合テストはいつも手間がかかって厄介だが、結果を見ると新しい希望の光が宿っている。小さな光に集中して無言で釉掛けする。冬の冷たい釉薬の感触が背筋を伸ばす。
最近は窯を焚く回数が増えて、無駄な力が抜けた様に思う。あまり悩まずにスッキリと1300℃付近まで温度を上げて練らし、結晶を促した後、すとんと終える。

一連の作業が最近実にここちよい。

窯出しのワクワク感が戻って来た。ダメならまたやればいいだけだ。
自分が良いと感じたものは朝の太陽の光を当てて、まじまじと眺める。



別の話。

過去の失敗作を家人が掘り返してきて丁寧に水で洗い、無邪気に盛り付けを楽しんだりしている。最初は「まいったなあ〜」などと思っていたが、不意に今迄全く気がつかなかった豊かな表情をその器が見せる事がある。盲点だった。最近は釉薬そのものの美しさに惹かれるあまり、使う事を忘れていたが、陶芸の魅力は使えることだ。そして実際のところ使うには適度なスキがあった方が使い易いという。眺める事を前提とした他を受け容れない、完璧を目指すものづくりとは考え方の根底から異なっているが、どちらも同じく「美」に通じている。

ここで一度原点に還ろうと思う。

うつわは、うけいれるもの。
いきることがたのしくなるような、おおらかなうつわをつくりたい。

最近は絵を描きたい一心で制作してきたので、器の約束事に添わない、描き散らしたスケッチブックの様なまとまりのない展覧会になりそうですが、ご笑覧いただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。









2016年10月28日金曜日

陶芸窯、塗り替え。REFRESH!

2009年に築窯してから7年が経過し、本焼150回以上、素焼きや金彩焼き付けも加えると500回近い繰り返しの燃焼で制作を共にしている灯油窯も外観の痛みが目立つようになってきた。
特に1300℃近い温度帯で引っ張ったりもするので表面の鉄板に伝わる熱変化も大きいことが予想され、分厚い鉄板でも放置しておくと穴があいてしまう怖れもある。




















扉も煙道まわりも大分錆びている、、、。
窯焚きする時は一日に何度も窯の前に行き、燃焼ピーク時には窯をじっと見つめて中の様子をイメージする時間がある。
そんな大事な時間に錆が気になって「あ〜修理しなきゃなあ〜、、、」等と考えてしまうのはなんとももったいない。
ということで、制作に没入する前の今、塗り替えをすることにした。

塗り替えの要はなんといっても丁寧に下地をつくること。
そしてこの作業が一番大変、、、。



まずはスクレーパーで浮いた古い塗装を剥がし、あとはワイヤーブラシでとにかく錆をこすり落とす。グラインダーは必須。マスクとゴーグル、丈夫な手袋も必須装備です。

錆を落とし切ったら良くホコリを払って、全体を灯油で綺麗に拭き上げます。
ここまでやればひとまず疲れ切ってヘトヘトです。


塗装前には表面に残っている灯油もしっかりと拭いて、まずは下地塗料(#903 グレー)を塗ります。
仕上げ塗りの耐熱塗料(okitsumo #15 シルバー、〜300℃)との密着効果アップを狙います。
(塗料の余り具合から見るとこのサイズの窯では0、8リットル缶で充分なようです。)

グレーの下地を塗ったところ。薄塗りの方が塗装膜がよく硬化し剥がれにくくなるとのこと。

上塗りもなるべく均一に薄く塗ってリフレッシュ!


ついでに柱や燃料タンクも塗装して綺麗になったので、見ていてすがすがしく気持ちがよいです。
次の素焼きまで時間もあるのでじっくりと塗膜を硬化させます。

実際の作品制作と別作業ではあるのですが、どうもこのあたりは作品の焼き上がりに影響してくる様な、やはり関係ない様な、なんだか不思議な感覚です。

しかし制作環境を綺麗に保ちたいのは僕の性分でもあるので、窯の前で過ごす時に少しでも気楽でいられる事はやはり制作環境として、とても良い事なのでしょう。