焼き上がりの色彩を思い描きながら、釉薬を掛ける。
手元には幾多もの灰色の釉薬たち、
色調はそれぞれの重なりや濃度に依って、その都度細かく変化する。
そして窯の中に置く位置や温度、焼成時間、酸素量に依りその釉の発色が決まる。
釉掛けの日はいつも、真っ暗闇に小さなロウソクを灯して絵を描いている様な気持ちになる。空を掴む様な、手探りそのもの。灰色の絵の具の重なりに想像するのは美しき色彩。
明るい日差しの下、窯から出されたテストピース達は、次の釉掛けの暗闇を照らす小さなロウソクとなる。土の特性を掴む貴重な手掛かりだ。
ここには、実験の結果としての色彩があるだけで、「成功」も「失敗」も無い。
そんなテストピースたちは、実験心と遊び心で作られるので、見ていて楽しいのです。