2018年6月16日土曜日

赤い釉薬の構成。

new red glaze.
新しく調合した赤い釉薬について。



日本の伝統的な陶磁器にこれまで存在した赤は主に鉄(弁柄)による赤絵や、銅の還元色の辰砂など。近代の陶試紅に代表される赤い着色顔料も含めてそのほとんどが不透明な色調だった。

陶磁器の歴史は長いので、透明感のある赤い発色は無理なものと思い込んでいた。しかしインターネットでガラス系、七宝系の赤い発色を調べてその発色の仕組みを勉強すると陶芸に応用することも不可能ではないことが見えてきた。赤や黄色を発色する金属の人体また環境への影響も、ガラス化された原料を使用することで影響はガラス内の変化に留まるため外部環境への流出は基本的には無い。(強酸性液体を長時間保持する容器内側への使用は避けたほうが良い。)他の陶芸原料と調合し、陶板との収縮比を合わせ、焼成温度を最適な発色に調整するテストを重ねて完成した。



原発事故を経験する前から陶芸で扱う原料物質の素性や毒性、扱う責任には強い関心を抱いている。

陶芸は環境と調和した自然な生業とのイメージもあるが、それは大きな誤解である。ウランを始めて工業利用したのも陶芸の着色顔料(黄色)が最初だ。



人間として、宇宙を構成する元素への飽くなき興味、探究心を持ち、自身の仕事の範囲内で無理なく安全に扱える範囲を定めて、個々の物質の内に眠る可能性をその固有の美しさとして最大限に表現していきたいと思って制作しています。

吉田晴弥